長岡市川口地域「人と自然の関係が豊かになると、人と人の関係も豊かになる」

新潟県長岡市にあるここ「川口町」は、人口4,500人ほどの農村地帯です。
山間部に点在する小集落と、大河信濃川・魚野川沿いに作られた町場で構成されています。
積雪が2mを超える豪雪地帯で、新潟の雪国らしい文化を持った地域であります。

ここは、2004年にあった中越地震の震源の町であります。
震源の町が、過疎の町、人口減少の時代に見つけた復興の「ものさし」は、自然との暮らし、集落という人のつながりの中で生きていくなどと言った「農村社会」が持ち続けてきたものでした。

この町で、イナカレッジは、2013年からこれまで長期インターン生3名、短期インターン生9名の若者を迎い入れました。
彼ら、彼女たちと共に、この地域の人たちとの人間関係をひとつずつ丁寧につなぎ、農村地域の暮らしに光を当て続け、その中で、自分たちの暮らし方を考えてきました。私たちは、誰と、どんな風に暮らしていきたいのか?自然とどう付き合っていきたいか?そんなヒントをこの町のインターンで見つけてもらいたいと思います。

以下は、イナカレッジ事務局 阿部の超偏った川口町の紹介です。

<基礎情報>

◆アクセス(東京から)
JR上越新幹線又は高速バス等で東京駅から長岡駅へ(約1時間半)
長岡駅からJR上越線で越後川口駅へ(約30分)

私(阿部)も川口地域にとってはよそ者です。

この文章を書いているイナカレッジ事務局の阿部も実はこの川口地域に住んでいます。私の生まれは新潟市、川口地域にとってはよそ者です。

この地域に暮らす人達と関わる中で、特に大きな決断もなく、自然とこの地に暮らすようになり、田畑を耕し、薪を割り、集落の役を担い、子どもを育てています。この地に足を運びようになった初めのころは、この地域にとっての当たり前の日常が、よそ者にとってはスペクタクルな冒険でした。

自然のスピードに追い付けない人にも収穫を分けてくれます

巡る季節の中で、この地に根差して暮らすと、次から次へと暮らしの仕事がやってきます。春の芽吹きから、冬の降雪まで自然はどんどん変化をしていきます。人間は、そのスピードに、取り残されないようにがんばります!取り残されると自然の恵みを享受できません!!自然の恵みをゲットした人から「ウド採れたから食べに来い」「鮎の刺身食わせてやる」「おい、イノシシの肉が来たぞ」と声がかかります。

暮らしの達人たちは、だいたい面倒見がよくて太っ腹!ゲットできなかったものにも分け与えてくれます。この収穫を周りの人たちと共有をすること、これがこの地域コミュニティの根幹にある人付き合いを作っていると感じます。

私はまだ分け与えてもらう事の方が多い人間です。毎年1つは、人に分け与えれるものを作りたいと目標は持っています(笑)

こちら長岡市のウェブメディア「な!ナガオカ」に川口の自然との暮らしの記事がいくつかも紹介されていますので、ぜひ読んでみてください。

ウサギ狩りから「食べること」の意味を学ぶ。豪雪地帯で体験する狩猟ツアー・前編

ウサギ狩りから「食べること」の意味を学ぶ。豪雪地帯で体験する狩猟ツアー・後編

漁師さんに密着取材!風味豊かな珍味「かじか酒」ができるまで

地域の文化を生かした生ハムをーー熟成肉の名手が語る「雪国ならでは」の製法とは

これぞローカル・つまみスタイル!長岡市が“酒と食と人”をテーマにブックレットを制作

長岡に新たな特産品が誕生!親子で参加できるメープルシロップ採取体験

はるか先祖までつながる集落の結びつき

よそ者から見て、また興味深いのが「集落」とよばれる家の集まりです。集落は、皆で協力してここで暮らしていくための機能的な側面も持っています。町場の町内会と違うのは、圧倒的な歴史の差でしょうか。神社を共有し、墓地を共有し、はるか先祖までこの人のつながりをたどることができるのです。その中で生まれる、自然な結束力は驚くべきものがあります。

都市の魅力度ランキングのものさしをあてても復興できない

川口は、2004年の地震をきっかけに、「この地域の暮らし」の魅力が、よそ者の手で光を当てられました。なぜ光があたったか?「この地域の暮らし」が価値あるものとして見直されない限り、「この地域をどう復興すればいいのか?」という問いに答えることができなかったのです。「便利さ」や「仕事や所得」「人口」などといった一般的な都市の魅力度ランキングの「ものさし」をあてて復興しようとしても、それはもう土台無理な話なわけです。

そして実際、私も含めよそからこの地にやってきたものは、「自然と暮らすたくましさ」や「オヤジや母ちゃんたちの太っ腹さ」「集落の団結力」といったこの地の暮らしに魅力を感じたのです。

過去のイナカレッジインターン生

そんな川口町には、山のてっぺん木沢集落を中心にこれまでの多くのイナカレッジインターン生が暮らしました。日々、地域の人たちと一緒に暮らし、働きました。今も川口にいる人、いない人、近くの町にいる人・・・いろーんな人がいますが、みんなこの地の人々が暮らしのどこかに存在しています。

高橋要さん 「『担い手』にはなれずとも「綯い手」にはなれる」
長期(1年)インターン生 木沢集落の一員としてあらゆるムラの仕事に携わる。廃校民宿の運営や各種体験事業なども実施。

山縣洋之さん
長期(1年)インターン生 狩猟など山の暮らしがしたくてインターンに参加。田畑の仕事からキノコ採り、狩猟まで山の民のような暮らし。インターン終了後定住。

百姓百貨店メンバー ゆき、しの、あめ
「百姓のナリワイを100箱の商品にプロデュース!」
短期(1ヶ月)インターン生 集落の暮らし・魅力を100個の商品にするプロジェクト。

百姓百貨店2017メンバー ゆりえ、みのり、さき
「百姓百貨店2017 ~遠くの村民に届ける「四季の木沢セット」づくり~」
短期(1ヶ月)インターン生 前年の百姓百貨店を踏まえ、木沢集落の名誉村民向けの商品を製作・販売

人と自然の関係が豊かになると、人と人の関係も豊かになる

震災からの復興で立てたモノサシ「今のままの農村の暮らしの価値」は、世の中的にも理解が得られるようになったと個人的には感じています。地震の時に、そんな山奥の村からは出て、町に住むべきだという論調があったことが今や懐かしいです。

一方で、農村の暮らしを体現してきた年配層が少しずつ減ってきているという事実もあります。この人たちが、自然との関わり、その恵を皆に共有してくれていたわけです。自然と関わるものがいなくなれば、共有してくれる収穫物もなくなり、つまるところ「人と自然」だけではなく、「人と人」の関係も希薄にしていってしまうことを最近切に感じています。

つまり「おい!○○が採れたから、今日こねーか?」という電話が鳴り、夜家ににお邪魔して、一緒にご飯を食べる、こんな日常がここの魅力なのです。

将来もずっとつづく農村を作る、暮らしづくり、仕事づくり

だから、ここで農業をやる若者が必要だ!・・・とは一気に飛躍して言うつもりはありません。そんな誰でもがやれることではないですからね。この地の自然と色々な形で関わりながら、結果的にこの農村の暮らしの人と人の付き合いを守っていける、そんな暮らし方をここで研究していきたいなと思います。

それは、魅力的な季節仕事を作ることかもしれない、地域とつながる宿屋を作ることかもしれない、魚野川で遊ぶグループをつくることかもしれない、おせっかいスーパーを繁盛させることかもしれない、、そんなプロジェクトをここから発信します!