【連載vol.5】就職したいけど就活したくない(西田卓司)

1.就職したいけど就活したくない

2015年4月、新潟市西区内野町に3人の女子がやってきた。ユニット名は「コメタク」。地元の米屋「飯塚商店」を拠点に、毎週土曜日の朝ごはん会や内野暮らし研究所などの活動を行っていた。3人のうち2人は新卒。

つまり3月に大学を卒業したばかりだった。(3月に3人が住んでいたのは東京、茨城、鹿児島だった)

3人とも雇用されたわけではない、つまり就職したわけではない。2人は大学4年次にいわゆる「就活」を行っておらず、進路未決定のまま秋を迎え、たまたま出会って、新潟での暮らしをスタートさせた。

彼女たちが感じていた「就活」への違和感とはいったい何だろうか。そんな問いが生まれた。茨城に移っても、「就活」についての違和感を感じている学生が思っていたよりも多いことがわかった。

 

それでは、「就活」とはいったい何で、「就活」の違和感とは、どこから来るのだろうか?

個人戦を戦う「就活」

「就活」は個人戦である。当たり前の話だ。学生時代に青春のすべてを賭けてサークル活動に取り組み、素晴らしい成果を上げてきたという仲間がいても、その仲間と一緒に就活を戦うことはできない。

しかし、仕事はひとりでやるものではない。フリーランスであっても、クライアントや一緒にプロジェクトを組む仲間がいるのが普通だ。つまり、団体戦である。それにもかかわらず、就活では徹底した個人戦を強いられる。

それはつまり、大企業になればなるほど、「人材は交換可能である」という思想の元に採用活動を行っていて(50人採用する内の1人が辞めても、会社は困らないように設計されている)、あなたでなければいけない理由は特にない。

自己分析と適職思想

就活前の業界・業種選びで出てくるのが自己分析である。自分とは何者なのか?分析ツールによって、自分を分析し、そこにマッチする業界・業種を探す。

その根底にあるのは、「適職」思想である。ひとりひとりにはその人にマッチした適職があって、それをうまく見つけないことで、「ミスマッチ」が起こり、早期退職につながる、というあの思想だ。はたして、それは本当なのだろうか。

会社を辞める人の主な退職理由は、「人間関係」にあるというデータがある。つまり、ミスマッチは仕事の内容ではなく、人間関係のミスマッチにあるのだ。

それにも関わらず、早期退職を緩和・減少させる方法として、早期(1,2年次)のインターンシップの実施が推奨されているのは、どういうことだろうか。

 

将来ビジョンと就職先

就活では、将来のビジョンが問われる。このような目標を持っていて、この会社なら実現できる、あるいは、この会社でのこのようなスキルの向上が自分自身の未来につながっている、そんなことをコメントしなければならない。

しかし、将来のビジョンがもし明確になっているのなら、そんなに企業をたくさん受ける必要もないだろうし、そもそも就職する必要もないのかもしれない。テクノロジーが発達した今、そのビジョンに合う人・会社は、以前よりは格段に見つけやすくなっているはずだ。

将来ビジョンと合わせて、会社を語るというコミュニケーションに違和感を感じるのも無理はない。

2 誰と働きたいか

「何を仕事にするか?」ではなくて、「誰と働きたいか?」が大切だという大学生に何人か話を聞いた。

「この人と、このメンバーの中で働けるのなら、テレアポも飛び込み営業も苦手なエクセルデータ入力作業もやります。」

 

そんな「誰と働きたいか」を大切にしている大学生には、現在の「就活」システムはまったく利用できない。

 

自分は何をしたいか。

自分は何ができるか。

自分はどのくらいのポテンシャルがあるのか。

 

すべて「自分」に矢印が向いている。でも、重要なのは、そういうことではなく、誰と、という一緒に働く人たちやパートナーなのだ。

 

そして、ここにひとつの罠がある。「誰と働きたいか?」を重視する大学生は(自覚している、していないに関わらず)、かなりいるのではないか。

 

そういう人たちが「人事の人がステキだったから」「働いている先輩を見て、こんな人と働きたいと思ったから」という理由で会社を選んでしまう。大きい会社であればあるほど、その先輩と(当然人事担当者とも)一緒に仕事をすることはない。だから、その決め方はリスクが高い。

3 「就活」を学びあいの場にする

茨城県日立市の株式会社えぽっくがこの夏、取材型インターンシップ「チームひきだし」という事業を展開し、その報告会が11月に茨城大学で開催された。

「チームひきだし」は県内外の大学生が8名ほどのチームを組み1週間のあいだに4社訪問し、経営者の話を聞き、午後からは社員とのワークショップを行って、その企業の魅力をアウトプットする、という事業だ。茨城県内の中小企業8社が受け入れ企業となって、最終的には企業紹介のインタビュー冊子としてアウトプットされた。

 

報告会で参加した企業のうちの1社の採用担当者は、次のようなコメントをした。「学生側から見て、どのように見えているのか、あらためて確認する機会となった。自分たちが目指しているものを再確認できた」

 

学生側のコメントは、「どうせ働くなら「雰囲気のよい会社」を選びたい。」「業種じゃなくて人との関係性で会社を決めたい」などのコメントがあった。「就活」における対話のデザインでもっと学びあえる場を作ることができる、そんな実感があった。

 

ところが、現在の「就活」システムは、採用する側と採用される側に明確に分かれ、採用される側である学生はメール1通、電話1本で一喜一憂し、ひたすら消耗していく。

 

対話し、学びあえる場の設計。そういう場をつくれば、3年生にならずとも、目標が明確じゃなくても参加できる就活が実現するのではないか。つまり、就活の目的・目標を「採用」だけに置かないで、コミュニケーションに置くということ。

4 暮らし方と働き方

2018年夏のイナカレッジのプログラムに参加した大学生の動機で注目したものがあった。

「東京以外で暮らしてみたかった」というもの。イナカレッジ夏プログラムは1か月にわたって3人で一緒に生活をしながら、地域(集落)と一緒に何かアウトプットを作り上げる、というもの。

「働き方」より「暮らし方」に重点を置きたい。そう言っている大学生もいた。

 

「仕事」か「暮らし」か。ワークライフバランスをどうするか?

「仕事」と「暮らし」、どちらを優先させるべきか?

 

実はそういう話ではないのではないか。

「働き方」は「暮らし方」に内包されているのではないか。

つまり、「暮らし方」という大きな円のなかに「働き方」は含まれているのだ。

 

そんな感覚をもつ大学生は増えているのではないか。

冒頭のコメタクの3人だってそうなのではないか。

内野町で暮らしながら、この3人で、飯塚さんと一緒に、何か始めてみたかった。

 

それを実現したかったのではないだろうか。

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書き手プロフィール>>

西田卓司:余白おじさん/現代美術家/NPO法人ツルハシブックス代表理事

新潟大学農学部在学中、畑はコミュニティの拠点になり得る、と任意団体「まきどき村」を設立、毎週日曜日に農作業後に囲炉裏を囲んで食べる「人生最高の朝ごはん」を実施。

2002年に不登校の中学3年生との出会いを機にNPO法人設立。(現在のNPO法人ツルハシブックス)

2008年、地域企業(主に新潟市)における大学生の長期インターンシッププログラム「起業家留学」を開始。

2011年、新潟市西区JR内野駅前に新刊書店「ツルハシブックス」を含むウチノ・コラボレーション・ラボラトリーを事業開始。

2015年、茨城大学社会連携センターにてCOCコーディネーターとして勤務。地域志向系科目の運営サポートおよび大学生の地域プロジェクトの立ち上げに携わる。

2018年、「にいがたイナカレッジ」に参画、中間研修等を担当。

現在のキーワード:「本」「本屋」「食」「農」「中動態」「地域」「キャリアドリフト」「感性」「身体性」

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