大切でないものはない【嶋田紬】

一人ひとりの存在が大切。

真っ暗な夜、お家の灯りは安心感を与え
可愛らしい子犬はご近所さんを繋いでいる

溢れんばかりの自然も大切。

草花は季節の変化を感じさせ
木は小鳥を惹きつけ素敵な音色を奏でる

それぞれが気付かないうちに何かしらの役割を果たしている

どれもみんな大切なもの

参加した理由

大学では国際協力・国際開発を学んでおります。貧困に苦しむ人や、地域や部族の慣習により人権が妨げられることなどが問題となっており、それらを改善させていく段階で外部からの支援が必要になります。

日本国内においても、持続可能な支援によって生活環境や地域コミュニティ改善の必要にせまられている地域がたくさんあり、国内という身近で起きている問題を見逃すわけにはいかないと思い、日本の地域活性化事業に興味を持ちました。

春休みに、福井県福井市にいらっしゃる(元)地域おこし協力隊員のもとでインターンシップとして受け入れていただきました。その方はにいがたイナカレッジを経験された方で、今回のコーディネーターである井上有紀さんをご紹介していただきました。

リクナビやマイナビでも様々なインターンシップの応募があり、進路を選択するにあたってどれを選ぶのが一番良いのか迷っていました。

せっかくの夏季休暇ということで、長い期間が必要とされる地域活性化事業を探していると、イナカレッジの井上有紀さんからのメッセージが送られてきました。そして実際にお話を聞きに行くと、プロジェクトとしての目標は設定されていても、そこまでの工程がインターンシップ生の自主性に委ねられていることから、自分を成長させられるチャンスだと思い参加を決意しました。

私が参加したプログラムは、地域の方との交流を通して成果物を作りあげるものであるということ、そして何よりも岩之入に住む“人”が魅力的だとお聞きして、選ばせていただきました。

とりくんだこと

岩之入インターンシップのテーマは、日々の生活を送っていく中ではなかなか気付くことが出来ない地域の魅力を、よそ者目線で見つけていき、地域内の方に再認識してもらうため、外部の人へは知ってもらうために暦として形に残すことです。

岩之入集落の課題は、地域をまとめていらっしゃる区長さんをはじめ地域コミュニティに積極的に携わっている世代が60~70代に偏っており、その他では更にご高齢の方や、仕事で集落の集まりになかなか参加できない若い世代の方の意見が反映されにくいという現状があります。

特にこれからの地域を担っていく若い世代の方々には、もっと地域に馴染んで関心を持ってもらい、地域を繋ぐ一員になってほしいという思いから、より気軽に若い世代で語り合えるようなイベントを企画しました。

ただのお食事会とは異なり、自己紹介を兼ねたアイスブレイクやレクリエーション等を取り入れることで、よりアットホームな雰囲気の中で交流会を開催することが出来たと思います。

また、岩之入集落の方の生活パターンに合わせて朝や夕方にお散歩をしたり、地域の方々は恥ずかしがり屋の方が多いと分かったのでこちらから積極的にお声かけをしたりと、様々な工夫をして実行に移すことで大変なこともありましたが、得るものは大きかったです。

共同生活から振り返る、自分の性格

インドへ一人で旅行に行ったりするくらい、周りをあまり気にしない自分だと思っていました。しかし一ヶ月初めて会った人と共同で生活を送るなかで、とても周りを意識していることに気付き、改めて自分自身を客観的に見る機会となりました。

言葉に表さないと相手へ伝わらない

柏崎市ではインターンシップを受け入れたことがなく、地域の方々はインターンシップ生に対してどの様に接したら良いのか戸惑っている様子でした。私達としても、初めからあまり踏み込んでいってしまうとずうずうしいと思われるのではないだろうかという懸念があり、少し控えめになっていました。

岩之入集落に来てから数日が経過したある日、区長さん達と共に花火を観に行きました。その帰り道に思い切って区長さんへ相談したのをきっかけに、今までの考え方から変わりました。「本当に何でも頼って良いからね」と言ってもらえたことから余計な心配が解消されました。

今までのやり方では感じていることや考えが十分に伝わっておらず、かえって地域の方へも遠慮をさせてしまっていたということに気付きました。

そこで私達の方から、こう変えた方がもっとおもしろいと思う、と提案をしてみたり、流し素麺の竹を用意する際に協力を依頼したら「この分野のプロがいるよ」と新たな繋がりが生まれたりして、言葉に出してみて本当に良かったです。

お茶会という名の縁会

地元で採れたお野菜をどの様に活用されているのかを知りたく、お野菜を受け取った際にはかかさず聞くことにしていました。が、どなたも「塩漬けするか、油炒めくらいだね」というお返事で、確かにお野菜の風味が活かされる調理法ではあるけれど、他にもまだあるのではないだろうかと思っていました。

ところが実際にお茶会に参加してみると、ゴーヤの甘酢サラダ、自家製トマトソースをのせた茄子のオーブン焼き、美味しいお米を感じる手作りおかきなど、次から次へと地元の食材をふんだんに使ったお料理が出てきました。

こうしたお茶会というのは、そのために事前連絡を取って集合するのではなく、たまたま朝会って「今からどう?家にあるのをちょっとつまむ程度だけど」というような感覚で集まって、二時間くらいはあっという間にお話出来てしまう、というものです。

これが日常であり当たり前でもあるご近所の繋がり、とても良い地域だと感じました。私が住む地元へ出張して来てもらい、この習慣を一緒に広めて欲しいくらいです。

ただの感謝状ではないものを作り上げたい

私達が滞在していた一ヶ月間、本当に多くの方々にお世話になりGive and takeといよりもずっとtakeし続けている感覚でした。

どのような暦にしたら皆さんにきちんと感謝の気持ちを伝えられるか、ということを毎日のように三人で考えて討論していました。

“作品としてお渡しするもの”という意識があったせいか、地域の方々の視点に近付いてまとめなければならないと考えていましたが、それではなかなか思いを伝えられず行き詰まってしまいました。そこで地域の方々に暦に取り入れてほしいことを聞いてみたところ、意外にも私達三人が岩之入で暮らした感想を率直に載せてほしいという要望が多かったのです。

一ヶ月岩之入で過ごした時間の流れを軸に、一人ひとりが感じたことを書き収めることで、自然な状態で心からの感謝を伝えられる、こうして日記を主とした暦が出来上がりました。

 

人と人との支えあい

最終日の報告会には多くの地域の方々が集まってくださりました。

真剣になって暦を見入っている方、こちらを寂しそうにジーっと見つめている方、天井をにらむかのように涙をこらえている方、キョロキョロ見回しながら今あの人は何を考えているのだろうと考えていました。

むしろ、自分に意識を向けると涙が溢れ出してしまいそうで、あえてそうしていたともいえます。

たった一ヶ月の間でも、氷を溶かすかのような温かい心を向け続けてくださった岩之入の方々へ感謝の気持ちでいっぱいになりました。

最終日はもちろん、「さようなら」ではなく「またね」の言葉でお別れをし、次また来ることを約束しました。ご近所さんもよそ者も、地域に入れば関係なく、一人ひとりの“人”という存在を確かに大事にし、お互いを支えながら生きている岩之入の温かさは、誰もがとりこになるのではないのでしょうか。