大学3年生の夏休みの一か月間、私は関川村小見集落で暮らしました。【黒田 美穂】

 

就職のためではない、生きるためのインターン

私がこのインターンへ参加したきっかけは主に二つあります。一つはプロジェクト内容に興味を惹かれたこと。もう一つは自分という人間を知りたかったからです。

私は写真や動画、文章で日常を記録することや発信すること、そして地域と関わることに興味がありました。大学3年になり、将来のことを考え始めた時、私の頭の中にあったのは「日常の記録」「発信」「地域」を組み合わせた何かがしたいという漠然とした思いでした。しかし、それを上手く言語化することがなかなかできず、実際に社会を見た時にそれができる仕事が何か思い当たるものがありませんでした。周りが徐々に就活モードに入り、「将来どういう系に進みたい」という話がちらほら出始める中、私は「自分は何がしたいのか」「自分が興味あることは何か」「本当の自分って何だろう」など、様々な問いかけが浮かびつつもそれと向き合うことができていない状況でした。

そんなときに見つけたのがイナカレッジの関川村のプロジェクト。このプロジェクトは「あの人に村の「今」を届けたい!地域の編集部プロジェクト」というものです。この「あの人に村の今を届ける」ということばが私の漠然としたやりたいことを表してくれている、と直感で感じました。「ここに行けば自分が本当にやりたいことを見つけられるかもしれない」。薄っすらとした道が見えたような気がしました。また、一か月間今の生活から離れて地域に住み込むことで、自分と向き合い、本当の自分を探せるのではないかと考えました。

 

人と人をつなげる

こうして始まったインターン。舞台は山形県との県境、関川村の小見集落。登場人物は個性豊かな小見の現住民。その中に飛び込んだ私達のゴールは、学生がいなくなった後でも地域の人が運営できる仕組み=編集部づくりです。勉強会やミーティングを通して、話し合う中で分かったことは、根底にあるのは「人と人をつなげたい」という思いであること。これを実現するための手段として集落外の人に届けるためのFacebookや、集落内で人々が話すきっかけとなる小見だよりがありました。これらを私たちが一回作る、一か月間更新するのは簡単です。しかし、それでは意味がありません。モノを作るのではなく、継続できるような仕組みを作るのが役目。集落の方はもともとやりたい、という思い、やる気が強かったので、私達はその背中を押しただけでした。

他に何かできることはないのか。そう考えた時、人と人をつなげるというところを目指すのなら、何も手段はFacebookや小見だよりだけではない、私達の様に外から大学生が来て一か月間暮らしていることも人々が話す、つながるきっかけになるのではないか。集落のどこに行っても私達の存在が知られていて、共通の話題となる。そんな状況を目指すのも一つの手段なのではないかと考えました。そのために、地域の行事に参加したり、近所の子供たちと遊んだり…。これと言って何をするわけでもないのですが、小見の皆さんとともに毎日を過ごしていました。

 

小見で暮らした日々

まず私たちが行ったのは存在を知ってもらうための挨拶まわりです。手書きのチラシを持って一軒一軒ピンポンして回りました。そして私たちも小見の皆さんを覚えるために、思い出しやすいエピソード、印象などを模造紙にまとめました。

小見に来てちょうど一週間後、集落作業を手伝った後にインターン生の歓迎会を開いていただきました。ここで私がぼそっと「お祭りの笛吹いてみたいんですよねー」と言ったところ、「吹いてみるか?」と篠笛登場。集落の笛吹き名人の方にご指導いただき、「報告会までに小見の盆踊りの曲をマスターして披露する」という新たなミッションが誕生しました。

二週目からは本格的に仕組みづくりのために動き始めました。対象、目指す姿、目的を話し合った結果、「小見に関わりがある人、あった人に村の今を伝えることで、小見に住む人にとって話すきっかけになり、今まで以上にコミュニケーションをとってもらいたい。小見を離れた人には小見を忘れないで、懐かしむことで頑張る活力となってほしい。」という軸が決まりました。その後、Facebook更新と小見だより発行を今後メインで行っていくだろう地域の方二人と話し合いやFacebook講習会、編集会議を行いました。

すると、予想以上にお二人ともやる気で、あっという間にFacebookページが始動し、小見だよりの第一稿が完成しました。「いかに多くの人を巻き込むか」で意見が一致しないこともありましたが、どちらも人を巻き込みたいというゴールは一緒。どこで巻き込むかの手段が異なるだけでした。ここで、目的と手段を分けて考えることでより多くの意見を認め、融合させることが可能だと学びました。

また、この週の週末にはインターン中一番大きなお祭り「えちごせきかわ大したもん蛇まつり」がありました。これは関川村民が一つになることを確認するために、村に伝わる大蛇伝説と羽越災害を基に始まったお祭りです。国際ボランティアサークルIVUSAの学生も参加しており、当日は、このために戻ってきた関川から出ていったしまった人達との再会の声などがあちこちから聞こえてきました。お祭りも「人と人をつなぐ」ための場であるということ、また、その力を感じました。

 

生きてるっていいな

そんな毎日の中で私が感じたのは「生きてるっていいな」ということ。

朝起きると必ず誰かがいて「おはよう」と挨拶をする。

道を歩けば挨拶だけではなく会話が生まれてくる。

大量のナスやトマトなどの季節の野菜をどうやって使うか考えながら、旬のものをその時に食べる。

暑い夏の日、扇風機の前でぼーっとする。

農道に寝転んで星を眺める。

すごく些細なことです。しかし、大学に入って一人暮らしをしている私にとって、そんなあたりまえのことはとてもうれしいものでした。常に何かに追われていた大学生活の中で見失いかけていた「生きていることの喜び」を取り戻すことができました。そしてそんな環境だからこそ、普段は目を背けたくなる自分自身と向き合うことができました。

 

帰ってきたい場所

一か月の最後の報告会ではそんな日々、私たちが小見で過ごした日々を小見の皆さんと共有したいと思い、撮りためた写真を使って動画を作りました。

目標は区長さんを泣かせること。

三週目、四週目は「ああ、もう終わっちゃうんだな」、「終わってほしくない」と思う毎日でした。

そして報告会当日。私たちが行ったことをスライドで発表した後に制作した動画を流しました。すると、副村長さんから「関川村特別住民票」のサプライズ授与が!

そのあと集まってくださった地域の方の前で話していると、泣かせる側のこちらが泣きそうになるという…。

報告会の後の懇親会では、この日に向けて練習していた篠笛を一緒に吹き(練習間に合わず5割くらいでしたが…)、太鼓が加わり、唄が入り、皆で盆踊りを踊りだしま した。

打ち合わせたわけでもないのに突如始まる盆踊り。その時、会場にいた人は本当にみんな笑顔で。こうやってみんなで一つになれるのいいな、と暖かい人のつながりを感じました。

一か月の中で一番忘れられない光景かもしれません。

 

考え、学んだ日々

小見で過ごした日々は学びの連続でした。それはもう書き切れないほどに。

その中でも一番大きな収穫はやはり「生きている喜び」を感じられたことです。
学業、バイト、部活よりも大切な「生きる」ということ。その根本的な部分に気が付くことができました。心に余裕ができました。そして、私は日常や日常の中の些細な喜びを届けることで別の地で頑張る人がいつでも帰れる場所をつくる、そんなことがやりたいのだと改めて思いました。私にとって、イナカレッジはそんな些細な喜びや帰れる場所を見つける、そして考えるきっかけを届けてくれた存在です。

イナカレッジのインターンは企業のインターンに比べて就職には直結しないかもしれません。しかし、その一か月の中で考えたこと、学んだことは必ず就職活動を含む自分の人生の役にたつと思います。急がば回れ。悩んで、焦っているときこそ、思い切ってじっくり考え、自分に向き合える空間に飛び込むことで、その先の道が見えてくる気がします。学びは暮らしの中にあるんだなと感じました。

一か月、本当にあっという間です。一か月間地域に住み込むというのは非日常。でもそこで体験するのはどこにでもある日常。そんな日常とも、非日常ともいえる中に飛び込んだこと、後悔はありません。

小見を離れた今、私は小見集落のFacebookが更新されると「あ、区長さん続けてくれてる!あそこ行ったところだ…」などとうれしく、懐かしい気持ちになります。そして、また小見に帰りたい、それまであの時感じたこと・考えたことを忘れないように今を頑張ろう」と思えます。今では私もすっかり小見の今が届くのを心待ちにしている一人です。

インターンに参加するきっかけをつくり、後押ししてくださった方、受け入れてくださった集落の方、いつも気にかけてくださった役場の方、イナカレッジの方、一緒に一か月暮らした2人。出会えた皆さまに感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました!