「にいがたライフスタイルカフェ 」レポート VOL.2 土と風のメディアから見る地方暮らし 〜 地方の魅力を再編集する〜

 自分らしいライフスタイルを実現している先輩を招いて、これからの暮らし方について考える「にいがたライフスタイルカフェ」。

 

第二回目は「土と風のメディアから見る地方暮らし」がテーマです。
どしりと根ざしたその地を耕し、生まれたものを受け継いでいく「土」、いくつかの地域を行き来して新しい視点や情報を伝達する「風」。それぞれの特性を持つ新生メディアの運営から、これまでの枠にはまらない「地方の魅力の伝え方」までゲスト3名が語りました。現地の人たちには当たり前のことも、切り口によって新しい魅力として受け取ってもらえる。大きな可能性を感じるトークとなりました。

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日野:イナカレッジの日野といいます。見た目はチンピラみたいですがとっても優しいので仲良くしてください。今回は第二回という事で「土と風のメディアから見る地方暮らし」をテーマに、実際にメディアを運営されている唐澤さんと佐野さん、メディアのなかでも広告を通じて地域の魅力をプロデュースされている小川さんをゲストにお招きしています。

 

唐澤頼充さん(にいがたレポ)

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唐澤:新潟から来ました唐澤頼充といいます。新潟をもっと楽しくするウェブマガジン「にいがたレポ」を運営しています。フリーのライター、編集者として仕事をしながら、花火の有名な新潟県長岡市でNPO職員としても働いています。

出身は長野県なんですが、大学進学を機に新潟に進学しまして、農学部で農業経営を学んでいました。卒業後は農産物や農村のプロデュースがしたくてマーケティング会社に入りまして、その後ライターとして独立しました。今はNPO職員として長岡の市民活動の情報発信等を担当しながら、最近流行りのご当地あるあるの新潟版「新潟のおきて」という本を出したりしています。

 

日野:「にいがたレポ」を知っている方はどれくらいいますか? あ、けっこう手を挙げてくれていますね。

 

唐澤:よかったです! 「にいがたレポ」は市民の人達が自分の街の好きな所を「あのお店美味しかったよ」「こんな場所おもしろかったよ」とレポートする形で紹介しています。 もう1つの特徴は、新潟県のトピックスについて一言コメントをつけて流すことができます。雑誌やテレビではあまり紹介されないような、本当に地元の人が好きな所を載せたいと思って記事を集めています。今80000ページくらい見られていて、フォロワーが4000人ちょっと。市民が勝手に情報発信していることが注目されて、商店街のサイトへの記事提供が始まったり、新潟市主催の水と土の芸術祭でも市民目線で街のおもしろいスポットを教えるプロジェクトに関わったりしています。

 

佐野知美さん(灯台もと暮らし)

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佐野: 2015年の1月にオープンしたウェブメディア「灯台もと暮らし」の編集長をしています、佐野と申します。

新潟県の見附市出身です。田舎者らしく大学は横浜に、そのまま東京で金融に就職しました。でもライターになるという昔からの野望を捨てきれず、就職試験に落ちた講談社を受けなおして兼業ライターをフリーで始めて、今はこちらを本業にして編集長をやっています。「灯台もと暮らし」は「これからの暮らしを考える」と銘打って、目まぐるしく変化する今の世の中を頑張って生きる人に、もう一度暮らしを見つめなおしてみませんかと問いかけるメディアになります。テーマとしては、「郷に入る」「旬と遊ぶ」とか、「営み」や「リアルの場」だとか諸々のカテゴリーをつけていまして、ボリュームのある地域特集に注目されることが多いですね。

私自身はすごくミーハーで、コスメやニューヨークの流行りを追いかけて記事を書いてた時期があって、そういうものが本当に大事なんだっけ?と考え始めた時期がありまして。 これからの暮らし、地域というのは途中で行き着いたテーマでした。

徳島県の神山町を会場でご存知の方は…やっぱり多いですね。ありがとうございます。ITの街や地域発信をしたことで有名な町ですが、逆に言うと多くの場合有名な部分しか外に出ていない。そこには個性のある人たちが暮らしていますし、テレビに出てないところを取材したいと思って特集を組みました。島根県海士町も同じですね。日本も“世界の離島”だと捉えると、小さな島の海士町は未来の縮図になり得る。1回特集して終わりではなく、半年後、1年後に訪ねることもしたいと思っていまして、実は神山町と海士町はすでに行っています。今日のテーマで言うと1回きりの風の人じゃないというか、時系列で追っていくと地域と一緒に成長していけるんじゃないか。なにか違うメディアのあり方を探りたいという想いもあって、「灯台もと暮らし」をやっています。

 

小川晋作さん(meet&meet)

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小川:小川と申します。僕だけかなり異色な気がしますが、よろしくお願いします(笑)。 ミカンや野球の強豪校・箕島高校で有名な和歌山県の有田市が地元です。そこから東京に上京して、電通テックという広告会社に入りました。 そこから独立して今はmeet & meetという広告の会社で、コミュニケーションプランナー、プロデューサーという肩書きをやっています。

最近は、花火で有名な新潟の長岡市さんが8月15日にパールハーバーで鎮魂の花火を打ち上げるというプロジェクトに携わっていました。

僕は、地域のメディアを作ったり情報配信をしたりすることではなく、普段は広告を作っていまして。どういう風に表現をしたら分かりやすく伝わってより話題化していくかを考える仕事です。例えば、富士ゼロックスさんと中小企業向けソリューション広告をつくった時は、例えば「ここから始まりが」といったどストレートではなくて、中小企業向けのソリューションを使って、一緒にその人達がドラえもんの秘密道具を作りましょうというプロジェクトにして、 実際に「どうだ、ドラえもん」というキャッチコピーで、実際にドラえもんの秘密道具を作るという広告を制作しました。中小企業向けソリューションって全くよくわからないんだけど、ドラえもんの秘密道具をいま作っていることは面白いかもしれない、と関心を持ってもらえるようになる。地域に足りないのは、こういう事かもしれないなと思っています。すごく良い財産はあるけれど、それをどういう風に見せていくかまだ考えられる余地はあるというか。外からの目でブランディングしていくことは結構できるんじゃないでしょうか。

 

 


他のメディアが取り上げない「生っぽさ」で地域のおもしろさを発信する。


日野: 唐澤さんは、「市民ライター」という取り組みをなぜやろうと思ったんですか?実際に始めてみて、どんな手応えがありますか。

 

唐澤: 市民ライターのレポートはいま450件くらいアップされています。 どの街も同じだと思うんですが、地元の情報ってネットにはそこまであがっていない。行きたい時に検索しても、そもそもお店の情報が少ないし、おススメも出てこないですよね。雑誌を見ても「この店の売りは鍋で云々で」というどれも宣伝文っぽい、似たような情報が書いてある。 じゃあ何を参考にするかというと、やっぱり「口コミ」ですよね。これって恐らく全国共通だと思うんです。僕の周りのSNS利用者が、「あのお店に行ったよ」という投稿に対して「私も行きたい」「それどこにあるの?」といった活発なやりとりがされているのを見て、友達の範囲以外にも教えてあげられたらとても有益な情報なのになあと思ったことが市民ライターのきっかけです。あとはもうちょっと綺麗なデザインで読みやすく口コミを編集していけば、かなり面白いコンテンツになるんじゃないかなと思ったのと、同じお店の情報でも、別の人が書くと全く違うレポートになると思ったんです。プロライターが1回書くと再度宣伝はやりにくいんですけど、例えば市民の、女の子、若手の男子、年配の方がライターだと、書かれていることの視点が変わる。それぞれにお店の楽しみ方とか、観光地の楽しみ方も提案できるなと思って。市民ライター制度はそうして生まれました。

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手応えについては、市民ライター自身がシェアしてくれて、それを見た友達が反応してくれるので、 他の一般的な記事に比べるとシェア率が高かったかなという印象はあります。ただ、なかなか続かない。ボランティアライターなので2〜3本書くと私の語る事は語ったみたいに息切れしちゃうというか(笑)。続けるには工夫が必要とは思っているところです。

 

日野: 「灯台もと暮らし」もあまり他のメディアが取り上げないという点は「にいがたレポ」と似てますよね。東京でウェブメディアを運営していると、知られていないところを取り上げることはあんまりお金にならないことでもあると思うんですが。

 

佐野:ウェブメディアは広告を入れる仕組みが一般的ですよね。PVを伸ばして、いっぱい人が見れくれるから「企業さん、スポンサーになって下さい」という仕組み。そうじゃないウェブメディアのあり方を探したかったのと、自分達が好きなものを好きだと言って記事を書きたかった。それで生きていけるか実験をしようというのを私達は今4人の社員と外部ライターさん1人の5人体制で作っています。私も大きな会社を退職して、「灯台もと暮らし」1本にしているので、本音をいうと結構人生かけてます。そういう他のメディアがやらないことをあえてやる事で、いま色々おもしろい事や、やってきてよかったなって思う事がたくさん出てきているので、私達の目線で記事を全て内製する方針は変えるつもりはないですね。

 

日野:ちなみに取材する地域はどういう視点で選ばれてるんですか?

 

佐野:悩みどころなんですが、ご縁ですね。 私は新潟出身なんですが「よし北海道行って特集すっか」みたいなのは不可能で。地域に詳しい仲介の方というか、ご縁で知り合った方がいるところを取材しています。

 


いまはメディア立ち上げの戦国時代?情報を「再編集」して、読者の心にドライブをかける


 

 

日野: 小川さん、いろいろなローカルメディア出てきている中で、全国的なローカルメディアの流れや、どういうことがこれから生まれてくるかとか、どんなふうに考えていますか?

 

小川:ウェブメディアに辿り着くまでにはいくつか流れがあるんですけど、1つは 例えば新潟に行きたいとき「新潟 食べ物」「新潟 観光」で検索して入ってくる 。もう1つは、もうSNSがすごい発達していますよね。日野さんの投稿をFacebookでみて入ってくるとか。大きくこの2パターンだと考えると、特に地方のメディアは「行きたくする情報」なのか、「行った時に便利になる情報」をあげていくのか。「にいがたレポ」はどちらかというと実際にその地域を訪ねたときにどこへ行こうか、次の行動を考える情報。「灯台もと暮らし」は、その地域そのものに行ってみたいと思えるメディアの作り方をしているのかな。

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今、すごいメディアが乱立していますよね。昔は新聞社系やポータルサイト系だったのが、今はキュレーションメディアが流行っています。いろいろな記事を編集し直した記事なんですが、切り口が良くてなんとなくシェアしたくなる。これってめちゃくちゃパワーがあるなと思っていて。例えば「高知に行って絶対訪ねたい絶景10個」という記事で、すごい良い写真がパンパンパンって載っていると「1回行ってみたい」と思わせる。実際に行くかどうかわからないけれど、心にちょっとドライブをかけるメディアが生まれてきているかな。広告が入っているこれまでの情報への警戒というか、本音をきけることが、ウェブメディアのより重要なポジションになってきているように思います。

 


新潟はポテンシャルのかたまり!地元の日常 = 他の地域には「非日常の魅力的コンテンツ」に。


 

 

日野:ところでメディア視点でいうと、新潟にはどんな可能性があると思いますか?ここが良いコンテンツになりそう、バズりそうというところをきいてみたいです。

 

唐澤:海も山も川もあって、雪がすごい降るところ。すべてがそろっている地域はあまりなかったりするし、東京からのアクセスもいい。

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「にいがたレポ」ではもっとレポートを深堀していきたいですね。キュレーションメディアの◯◯何選という記事のリンク先に、もっと深い紹介記事があったりしますよね。その深い紹介記事を、本当に地元の人達が楽しんで書いてる状況を作りたい。あと新潟は神社の数が実は日本一なんですよ。京都の方が多そうなイメージですけど、そう思う原因は情報の流通量かと。県内のガイドブックもつくられているんですが、実際のところ消費者の元まで届いてないんです。旅雑誌のコーナーでも新潟の情報はあまり流れてない。だから市民が良いと思った情報を増やして、それを流してあげる仕組みがあれば、どこの地域でも面白がられるのかなとは思います。

 

佐野:実は私、新潟特集を組んだことがもう1回あるんですね。 取材先1つ1つにストーリーがあって、人に会う旅っていうのは、これから注目されてくと思います。新潟特集を組むのは地元の人に自信を持って欲しいというのもあります。私自身、新潟出身だと自信を持って言えるようになるための探し物でもありますね。

それに発信の仕方で全てが魅力的になると思っていて。今の日常が誰かにとっては日常じゃないことは往々にしてありうる。何でも「灯台もと暮らし」なので。メディアに出ないリアルな声って地味でお金にならないんですけど、何か響く人はいるかもしれない。うちはPVをふってないんですが、誰かに差し出す置手紙のような感覚で作っていくことで、それが蓄積されて、最後には背中を押すものになれたらいいですね。

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小川:長岡の人、飲ませるんですよね(笑)飲まないと話にならない時があるくらい(笑)。冗談はさておき、新潟の価値というよりも、いろいろな地方に価値があるかなと思っています。休日のFacebookを見ていると、ボンボンボンってあがってくる写真に自然が映ってない時ってないんですよ。キャンプに行ったり、グラウンドでサッカーをしていたり。新幹線で1時間半くらいでポッと行けちゃう新潟までの距離って、実は伊豆まで車で移動する時間と同じくらいだったりしますよね。僕ももともと田舎町で育ったんで自然には飽きてるはずなんですけど、新潟を訪ねたらすごい新鮮だったんです。新潟に住んでいる人にとっては、なんとなく、あたり前になりすぎちゃっていて、見えてこないことがいっぱいあるんじゃないかな。大きなポテンシャルを持ってるんじゃないかって気がしています。

 


地元の人と交流する。その土地ならではの、五感を刺激するような体験をする。

それだけで地域の印象はがらっと変わる。


 

唐澤:最近、旅行でも体験系が増えていますが、「にいがたレポ」に協力してくれる市民と読んでくれているファンがリアルに会う場が大事なんじゃないか。最近特に思っているんです。現地の人といかに出会えるかで地域の印象がガラッと変わる。俺たちの街を自慢したい人が増えて、発信のスキルがちょっとでも上がっていくような、そういう出会いのパイプがあるといいなと思っています。

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小川:体験価値をどう作ってプレゼンテーションするか、が重要ですよね。「こんな景色見ませんか?」もありだと思うんですけど、「こんな体験しませんか?」とプレゼンテーションができているところはあんまりないかなと思っていて。例えば「田植え体験しませんか」ではなく「泥んこになって水田で苗を植えましょう」だと、ちょっと五感を刺激するようなシズル感が出てくる。表現の仕方次第ですよね。新潟は財産があるし、先ほどの神社の数が日本一であれば、「神社全部まわろうぜ」みたいな企画やったら、それなりに集まってくるんじゃないかな。 体験価値をうまく変えることで、地域の価値はもっと出てくる。湯沢に行ってスキーをやるだけじゃない、長岡に行って花火を見るだけじゃない価値をどう作っていくか。もっともっとやれる事がいっぱいあると思います。

日野:にいがたにもまだまだたくさんの可能性が感じられる機会でした。どうもありがとうございました。

 


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