企画展『妻入り暮らし物語』をプロデュース
出雲崎町の海岸地区。かつて天領地として栄華を極めた場所です。江戸時代には人口2万人を超えたと言われるこの町では、近年問題となっている少子高齢化や町外への人口流出、過疎化による空家増加などが顕著に現れています。
そんな出雲崎町で1ヶ月間暮らし、企画展をプロデュースし、町の魅力を再発見するといった趣旨で始まったインターン。
9月の最終週まで活動していました。そのあと東京に戻り、また学校に…と思いきや、1ヶ月も経たないうちにちゃっかり出雲崎に戻って来て、今も日本海を眺めながらこの文章を書いています。
出雲崎に帰って来てまず、近所の子供達に会いに行きました。なんでいんの!?何しに来たの!?とか学校サボったの!?とかボロクソ言われましたが、みんな満面の笑み。そう、海岸地区にはツンデレな人たちが多いんです。
これも暮らしてみないと分からなかった出雲崎の魅力。そんな魅力に気づいたのも今回のインターンのおかげだと思っています。
なぜ参加したのか
現在大学4年、建築学科に通っている僕は卒業論文を書いています。テーマは、出雲崎の建築とコミュニティについて。
東京の大学に通い、東京の建築について論文を書く。そんな当たり前のことに、ひねくれ者の僕は違和感を覚えました。だってそんなん誰でもできるじゃん。
地方に長期滞在して、パッとみただけじゃわからないような何か。それを研究しようと思い、出雲崎に夏休みの間滞在することを決めました。
そんな時、ちょうど今年、2018年、しかも平成最後の夏、その出雲崎町でインターンがある。という一大ニュースを研究室の先輩に紹介していただきました。
内容はどんなだろう…
どうせインターンなんて働かなきゃだしなあ…
そんなことを思いながらイナカレッジのHPを見ると、そこにあったのは働くインターンではなく、暮らしのインターン。
人と関わりながらできる活動。デスクワークが嫌いな僕にとって、こんなにも魅力的インターンはありませんでした。
出雲崎のインターンの詳細を見ると『企画展 妻入り暮らし物語をプロデュース』とのこと。企画展ってなんだろう…と思いながらも、まちに前向きな姿勢を…!と言った趣旨にも惹かれ、参加を決意しました。
インターンはじまり
まずはじめに、めちゃめちゃ驚いたのが、出雲崎、近所の家だいたいわかるっていうところ。挨拶回りの途中で近所の人に、どこが空家なのかわかんねえ…って相談したら、地図持ってこいやって言われて、そしたら、近所のどこに誰が住んでるのか、空家や別荘はどこか、何時ぐらいに行けば家にいるか、全部知ってました。
現在東京で一人暮らしをしている僕は、隣に誰が住んでるのかすら知りません。ご近所づきあいのある町、いいなあ。って思いました。
そんな驚きから始まり、朝の小学生のスクールバスの見送りや、漁港での魚の仕分けの手伝いなどを通じて、たくさんの人と関わらせてもらいました。
役場にお借りしていたとっっっっっっっても広い家を使って、漁師さんとの飲み会を開いたり、子供と遊んだり、近所の人とお茶会を開いたり、家をフル活用してのインターン。
町の子供たち、ママさんたちとのカレーパーティーには、全部で57名もの方に集まっていただきました。
子供たちは家中を元気よく走り回り、ママさんたちとの話も盛り上がりました
ナニコレメッチャオモシロイ…
なんて思ってたらあっという間に時間は過ぎ、企画展、やらなきゃ。ってなりました。
ここでやる必要ある?めんどくせ〜とかならなかったのは支えてくれたイナカレッジの金子さん、出雲崎町役場の高橋さん、小林さん、そして企画展を楽しみにしてくださっていた町民の皆さんのおかげです。ありがとうございました…
企画展
さあ準備しよう。と思ってはみたものの、何をやればいいのか。悩みに悩んで、自分の中で出た答えは、『知らない』をなくす。
知らないことを知ること、つまり、『気づき』というものは『共感』を生み、それは人と人との会話を増やし、コミュニティを活性化させることができる、そう考えました。
なぜこの考えに至ったのか、それはたくさんの方々と関わらせていただいた結果、
・めちゃめちゃ見た目厳ついのに話すと優しいおじさんとか
・可愛いキャラなのに43度のお酒を勧めてくるおじいちゃんとか
・めちゃんこ美味しい料理作ってくれるお母さんとか
・元気って言葉じゃ表しきれないぐらい元気な子供達とか
・誰よりも未来について考えてくれてるママさんたちとか
例を挙げたらキリがない。
それだけたくさんの魅力で溢れる人達がこの町にはたくさんいることを知りました。
ただ、話をしていると、
・子供がいねえ
・バカばっか
・つまんねえ
・なんもねえ
なんでそんなに悲観的…
こんなに面白い人たちがこんなにもたくさんいて、それを知らないのはもったいない。
そんな訳ではじめの方のミーティングで提案したのが
『知らない』をなくす企画展。
いつもは人がいないように見える場所にも、実は朝方いつもおばちゃんが座っていたり、夕方には子供の遊び場になっていたり、そんなパッと見ただけじゃ分からないような魅力。
そんな魅力的な日常の一コマを、こどもでも、おじいちゃんおばあちゃんでもわかるように、文章ではなく写真メインでの企画展にしようと考えました。
また、日常に溢れる魅力だけでなく、出雲崎の未来を本気で考えてくれているママさんたちや、自分たちの1ヶ月間の生活そのものにもフォーカスして、企画展を開催することになりました。
企画展開催中は実際に展示を見ていただきながら、出雲崎の魅力やこれからについて話したり、写真を撮った時のことについて話したり、とても充実した時間を過ごす事が出来ました。
二日間の展示で、合計73名の方に来ていただきました。打ち上げには34名の方にお越しいただきました。子供から大人まで、皆さんが展示を楽しんでいてくれる姿を見てとても嬉しかったです。
最後に
インターンの活動中、帰る前から、皆さん必ず、「また来いね」と言ってくれます。赤の他人の生活の中に長期間入る事で、その人たちの平和な日常を壊してしまうのではないかという不安もありました。しかし、その「また来いね」の一言で、少しでも役に立てたのかなと思い、嬉しくなります。
これからもこの町、この町の人たちとはなんらかの形で関わっていけたらと思います。
最後になりましたが、期間中、ご理解ご協力いただき、支えてくださった全ての方に、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。これからもよろしくお願い致します。