こんにちは、イナカレッジ事務局の井上です。新潟の山はだんだんと赤や黄色の衣を着始めました。山の方に行くのがとても楽しみな日々です♪
今回は、夏のインターン番外編。私たちにとっても初めての試みだった、時期的には「秋のインターン」といってもいいような、あるインターン生のレポートを紹介します。
夏休み、3人の女の子たちがムラだより「かのん」の創刊号を作成してくれた、胎内市鼓岡地域。この地域に、3人が帰った後、また別のところから1人の大学生が2週間滞在して、次号の特集を作ってくれていたのです。
夏の募集の時に「興味があります!」と声をかけてくれたその大学生が、愛媛大学の牧野夏子ちゃん。
クオーター制という大学の特徴から、実施したのは夏のインターンとは少し時期をずらした、9月末から10月前半。私たちの対応もいろいろと例外となってしまった中、期待を大きく上回る結果を見せてくれました。
本当に夏子ちゃんを受け入れてよかったです。そんな夏子ちゃんのレポートをぜひご覧ください。
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このインターンシップに参加しようと思った一番の理由は、ムラだよりを作るということに興味があったことです。
私は普段から雑誌や本を読むのが好きで、雑誌もファッション誌から地方情報誌なども進んで読んでいます。
また、私は現在愛媛大学に通っていますが、大学のサークル活動の中で、学生向けにフリーペーパーや冊子の作成をしていました。そのような生活の中で、紙媒体で何かを伝えることの魅力を感じていました。
また、私の地元は鳥取県の中でも田舎のまちです。
現在は地元を離れて松山市に住んでいて、地元よりはずいぶん便利な生活を送っています。
飲食店も多く、娯楽も十分にあふれるところで、特に不満はありません。しかし、大学とバイト先くらいにしか自分のコミュニティはないことに気づきました。
そんな松山の暮らしの中ではできないインターンシップは何かと考えたときに、田舎での地域活性化に役立つ活動ではないかと思いました。
就職活動に直接役に立つかは分からなかったけれど、このプロジェクトを見つけたときは「私のやりたいことだ」と思いました。
新潟には行ったことはなく距離的にかなり離れている地ですが、そんなことは関係ないと思うくらいこのインターンシップに惹かれ申し込みました。例外的な時期に2週間という短い期間でしたが、受け入れてくださったみなさんには本当に感謝しています。
私はこのインターンでは、鼓岡・熱田坂・宮久集落のみなさんに自分のムラに誇りを持ち好きになってもらえるようなムラだより「かのん」の冬号特集記事を完成させました。
「かのん」はこの夏にインターンシップ生により創刊されているものです。夏のインターンシップ生によって「かのん」に込められたコンセプトを引き継ぎ、冬号らしい特集記事をつくることが私の役割でした。そこでの私のしたことや感じたことを報告していきたいと思います。
2週間のうち主に前半は地域の皆さんに取材、後半は記事作成といったものでした。
まず、私のインターンシップは、鹿ノ俣地域を知るところから始まりました。いただいた資料から人口減少や積雪の深刻さなどの問題を読み取ることができました。
集落点検の資料に目を通すと、目立つのは「雪が多くて大変」という住民の声でした。
そこで、雪が多く積もり寒さの厳しい冬を少しでも楽しく、またあたたかく過ごしてもらえるような記事だといいなと考えました。
2週間という短い期間であったので、2日目には大まかなテーマを決める編集会議が行われました。
案出しの結果「冬のぽかぽか大作戦」と題し、地域の皆さんのあたたかく過ごす秘訣を分かち合いぽかぽかな気持ちを共有してもらえるようなもので、と記事の方向性が固まりました。
そこから、地域住民の方々に取材が始まりました。
ソトから来た私をあたたかく受け入れてくださる方ばかりで、お話をするのは本当に楽しかったです。
しかし、私は短い期間で記事を完成させなければならず、どうしても効率の良い聞き方をしないといけないと焦っていました。
しかし、それに囚われてばかりではダメだと気付きました。人と人が関わるときに決まったひとつの手段はなく、ひとりひとり色んな人がいて、その中で言葉を引き出しやすいように会話をすることが大事だと気付きました。
私は、自分がどう質問したらよいかばかり考えていて、相手個人に応じて気持ちを汲み取ってそこから考えることができていなかったのだと知ることができました。
このプロジェクトがあるから鹿ノ俣地域が存在するのではなく、鹿ノ俣地域があるから私のやるべきことがあるのだと感じました。
こうして学んだことは、お家に招いて下さったひと、お野菜やお米・手作りのおかずを下さったひと、一緒に遊んでくれたひと、色んな人々と関わる中で鹿ノ俣地域の皆さんが与えてくださったものだと思います。
日々寂しさや悔しさや惨めさや焦りを感じながらも、地域の皆さんに元気をもらいながら「頑張ろう」と思うことができました。
関わりが増えれば増えるほど、地域の皆さんのために、という責任感が強まりました。いつしか、この記事は私の地域の皆さんへの感謝の結晶とも思うようになりました。
いざ記事を書くときは、まずはラフの作成から入りました。
今までに読んだ色んな雑誌を思い返しながら、レイアウトを考えました。
インターンシップのコーディネーター兼かのんの編集長の圭奈さんからラフに関してお褒めの言葉をいただいたときは、今までにない嬉しさで「やったー!」と思わず声に出ました。今でも覚えています。
しかし、そう簡単に事は上手く進みませんでした。私が何より苦戦したのは、自分の語彙力の無さです。
伝えたいことがはっきりしていても、うまく言葉にできず一つの文に何十分もかけることもありました。
しかも、この記事を一番目にするのは地域の皆さんであり、お年寄りでもわかりやすい文章にする必要がありました。何度も何度も文を書き直し、文法や言い回しを調べたりしながら、かつ自分の言葉で伝えようと試行錯誤しました。そうしてできた記事は、本当に自分の納得できるものになりました。
記事が完成したときに頭に浮かんだのは、このインターンを通して関わった鹿ノ俣地域の皆さんの顔でした。
皆さんがいたから私は記事を完成することができました。
「冬のぽかぽか大作戦」で一番ぽかぽかな気持ちになったのは私だと思うくらい、本当にあたたかい人々の集まるあたたかい地域です。
初めて訪れた新潟県胎内市の鹿ノ俣地域。ここでの生活を思い返し感じるのは、辺り一面稲穂の広がるただの田舎なんかではなく、ひとりひとり個性が豊かで彩りがあって、きちんとこの地域に色があることです。
「胎内市は母胎のようなまち」とどこかで見かけましたが、たった2週間ちいさな地域で過ごしただけの私でも、本当に母胎のようなぬくもりがあると感じることができました。
私はこのインターンを通して、自分の中にある課題に気付くことができ、また人とのつながりの大切さや田舎の面白さなどたくさんのことに気づけました。
これからの就職活動で役に立つかはわからないけど、ここで感じたことや得たことはいつかの将来できっと役に立つ気がします。かけがえのない時間を過ごし、忘れることのない思い出になりました。
最終日にみた鼓岡の大杉からの景色は、やっぱり初日に見たものとは格別でした。
そこには私の大好きなまちが広がっていました。
何か見過ごしている「魅力」に気付いて、発信することって本当に面白くてやりがいがあります。今回「かのん」に携われたことで分かったことです。
ぼんやりとしていることだけど、魅力を感じる何かを一生懸命支え続けて生きていきたいです。
今回のインターンシップで関わり協力してくださった皆さん、鹿ノ俣地域の皆さん本当にお世話になりました。ありがとうございました。
牧野夏子