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かやぶき屋根と「じょんのび」な暮らし【地域を書く合宿in柏崎市高柳町】

地域を書く合宿in柏崎市高柳町にて、参加者の榎本未希さんが書いた記事です。イナカレッジのインターン生の受け入れ先でもある「高柳町荻ノ島集落」にある「荻ノ島かやぶきの宿」の紹介です。

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みなさん「じょんのび」という言葉をご存じでしょうか。「じょんのび」とは新潟県の方言で、ゆったり、のんびり、芯から気持ち良い、という意味で、漢字で書くと「寿命伸」。
新潟県柏崎市高柳町荻ノ島では、かやぶき屋根と共に人々がじょんのびと暮らしています。荻ノ島は約800mの小さな環状集落で、人口は68人(2017年3月12日現在)です。道の周りにはかやぶき屋根の家と田んぼが広がっています。じょんのびとはどういうものなのか。忙しい現代社会のなかでゆったりと、のんびりと生きるとはどんなものなのか。荻ノ島で暮らす春日俊雄さん(65歳)にお話をお伺いしてきました。

春日 俊雄さん
1951年生まれ。ニッポンのふるさとかやぶき集落荻ノ島代表。
荻ノ島集落の維持と持続に向けた仕組みづくりを行っている。

「四季と共に生きる荻ノ島」

―春日さんはどの季節が好きですか

春日さん:前までは春が好きだったんだけど、この頃は冬もいいね。

―え?冬ですか??
春日さん:うん。冬は雪が降るでしょ。そうすると雪の中に山も畑も田んぼも、みんな雪の中に埋まるから情報の量が少なくなるんだよ。

―なるほど。情報の量。

春日さん:いろんなものが雪の中に埋まるから、情報の量が6~7割なくなる。この今の社会の中で6~7割りの情報がなくなった世界に身が置けるっていうのはすごく幸せで、豊かなこと。そして情報がなくなると、自分と向き合う時間が多くなるんだよね。そうすると深く物事を考える時間が増えてくる。今のこの情報社会の中で自分と向き合う時間を作れるってすごいことなんだよね。

―確かに。今の社会はどうしても忙しい、忙しいって思っちゃって自分と向き合う時間ってなかなか取れないですよね。

春日さん:うん。だから自分と向き合える冬っていいなって思う。雪が降ってから雪が解けるまではいい時間。だけど春もいいね。

―私も春が一番好きです。荻ノ島の春はどんなところが良いですか。

春日さん:うん。春になって山に入ると元気がもらえる。草木が芽吹いてくるから。あと冬に考えていたことを行動に移せるんだよね。雪が解けると、体も動かせるようになる。だから春もいいね。

―なるほど。荻ノ島で暮らしていると春夏秋冬で違った良さがありそうですね。

春日さん:うん。荻ノ島は自然の移り変わりと自分たちの生活が一緒になっている。だから春夏秋冬の季節がはっきりしているね。

「地域とは複雑な重なり合い」

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―春日さんは、荻ノ島で生まれ、進学を期に大阪で暮らしはじめ、その6年後に荻ノ島に戻ってきたんですよね。荻ノ島を一度離れてまた戻ってきたとき、荻ノ島のどんなところが良いと思いましたか。

春日さん:自然と共に生活を営んでいることかな。この地域で暮らす人はよりよい生活のために道具を工夫して作ったり、食べ物もよりおいしく頂けるような工夫を重ねたりしてきた。こういう自然、文化、人とかのいろんな時間の複雑な重なりで今がある。この複雑さがとても大事。この重なり合いは意図的にできたものじゃなくて、人々の状況を良くしよう、良くしようという優しさと助け合いの気持ちでできているんだよね。荻ノ島はこういう人々の時間が重なり合ってできているんだなって思ったね。

―なるほど。地域ってその土地の自然や文化とともに、当時生きていた人々の思いでできているんですね。荻ノ島の特徴であるかやぶきの屋根に対する思いはありますか。

春日さん:かやぶきの屋根には小さいころから住んでいるからやっぱり好きなんだよね。かやぶきはいいですよ。不思議なんだけど、かやぶきの屋根で生活したことない人がかやぶきの屋根に泊まると「なつかしい」って言うんだよ。

―確かに。私も昨日かやぶきの屋根にはじめて泊ったのですが、なんだか暖かい雰囲気がして落ち着きました。はじめてなのに。

春日さん:うん。かやぶき屋根は地元の材料を使って、地元の技術を駆使して生み出しているんだよね。かやぶきの屋根って、古くなると土に戻るんですよ。

―へえ。かやぶきの屋根はどのくらいもつのですか。

春日さん:20年くらい。最近は短くなってきてるんだよね。

―え?どうしてですか?

春日さん:うん。囲炉裏で薪を燃やさなくなったから。薪を燃やすと煙が出るでしょ。そうするとその煙が、かやぶきに虫がつかないようにしたり、腐るのを防いだりするんだよ。でも今薪で火を燃やすと目から涙がでちゃうからね。

―なるほど。確かに私が泊ったところも薪ではなく炭でしたね。

春日さん:うん。生活の変化と共に家も変わってきたよね。あとかやぶきは夏の建物って言われているんだよ。かやぶきが厚いから屋根が焼けるのを防ぐし、夏は風通しが良い。だから夏でも涼しい。冬も涼しいんだけど薪ストーブを使ってうまく生活しているよ。荻ノ島にはかやぶきの屋根がやっぱり一番似合うと思う。

「都会と地方でお互いの生きがいを支えながら生きている」

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―春日さんの夢は何ですか。

春日さん:夢はこういう雰囲気の集落を未来につなげていくことかな。大勢で何かをやるってやっぱり楽しいから。都会の人とつながりながら荻ノ島と都会が共に支えあっていけたらいいな。

―なるほど。都会と荻ノ島の支えあい。

春日さん:うん。支えあいっていうのはお互いの生きがいの支えあい。生きがいがあるって幸せでしょ。荻ノ島のお母さんが生きがいとして作った野菜を都会で売って、その野菜を食べる都会の人が喜んでくれる。これも生きがいの支えあい。

―おぉ。地方と都会が生きがいを通して支えあうって素敵ですね!

春日さん:うん。お互いに支えあえば競争しなくてすむでしょ。競争に使うエネルギーを支えあうために使えば楽しいんだよね。だから交流を大事にしながら、お互いの幸せのために支えあいながら生きていければいいかなって。これからの時代は都会の人も含めての「地域」なのかなって思う。

―なるほど。「地域」とか「コミュニティ」って言葉って範囲が狭いイメージがあるけど、支えあいを通して、どんどん広くなっていくものなのかもしれないですね。

春日さん:うん。荻ノ島に住んでいる人だけじゃなくて、ちょっと荻ノ島に行ってみたいとかそういう人も地域に関係する人。ともに支えあう人々はみんな地域の人なんだと思う。

―そうですね。その支えあいを広げていけば、都会とか田舎とか関係なく日本全体が荻ノ島の地域の一員として繋がりそうですね。

春日さん:そうそう。これからの時代は、がちがちに固まったコミュニティじゃなくて、人との繋がりとか、組織の繋がりとかでコミュニティがどんどん大きくなっていく気がする。

「じょんのびの夢」

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―これから荻ノ島はどんな地域になってほしいですか。

春日さん:じょんのびという夢をみなさんに持っていただけるようにしたい。さらに物売りではなく、じょんのびの夢で荻ノ島という地域を活性化したいね。

―なるほど。物ではなくイメージで地域活性化。

春日さん:荻ノ島は、人、文化、自然とかいろんなものが複雑に絡み合っている地域だからこそ、ここには人間が活性化するための本質があるんじゃないかなって思うんだよね。これがじょんのびの原点にもなるんだけど。

―じょんのびって言葉、今まであんまり聞いたことなかったです。

春日さん:うん。じょんのびっていうのは、荻ノ島で考えると、まず小さいことは良いこと。それから自然と共にある暮らしが良いこと。あと雪国っていう厳しい状況にはあるけど、お互いに知恵を出し合いながら生活を豊かにしていくこと。これがじょんのび。例えば平場の広い田んぼを作るよりも棚田の田んぼを作っている方が気持ちがいいんだよね。この気持よさを作るのもじょんのび。

―なるほど。

春日さん:どんなに時代が進んでも荻ノ島はこういうじょんのびがある村でありたい。だから物を売るのではなく、じょんのびというイメージを使ってこの地域を活性化したいし、じょんのびのイメージで旅行者や旅人には来てほしいね。

―うんうん。地域の皆さん、じょんのびで笑顔も素敵ですよね。

春日さん:面白いんだけど、昔の人の写真と今の人の写真を並べると、昔の人の写真の方が表情がとても豊かなんだよ。あと都会の人が、荻ノ島のおじいさんおばあさんの写真を見て、「都会のおじいさんおばあさんよりも表情も豊か」って驚いていたよ。

―そうなんですね。確かに、新潟の田舎に行くと、おじいさんおばあさん、本当によく笑うな~って思います。田舎にいると大きな笑い声がたくさん聞こえてきますよね。

春日さん:そうそう。それはやっぱりじょんのびな生き方をしているから。これが大事だと思う。こんな村が日本の中に残っていけば面白いよね。例えば、この辺りを月に二回くらいみんなで草刈りするんだけど、誰に一番ご褒美が行くと思う?

―ご褒美ですか?草を刈ってもらった人かなぁ。

春日さん:うん。ご褒美。ご褒美は一番草を刈った人のところに行くんだよ。確かに草を刈ってもらった人も気持ちが良いんだけど、やっぱりそこで汗をかいて働いた人のところに一番ご褒美がいくんだよね。「喜んでもらえて気持ちいい」って。

―なるほど。これがじょんのびですね。いい言葉ですね。じょんのび。

春日さん:うん。じょんのびの時代になれば争い事もなくなると思うし、じょんのびの気持ちを持っていればきっと良い人生を送れるんじゃないかな。

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どこの地域にも、歴史やその地域で生きてきた人の思いがあり、生活がありました。そしてこの歴史や生活、思いは地域の自然と共に積み重なっていきます。荻ノ島で暮らしている春日さんからは「じょんのび」というのんびりと、ゆったりとした優しい雰囲気が伝わってきました。かやぶきの屋根で感じた暖かさはじょんのびを大切にしてきた先人の方からのプレゼントなのかもしれません。
物理的に豊かになりながらも、「忙しい、忙しい」と言いながら慌ただしく動く現代社会。私たちの生活の中に荻ノ島の「じょんのび」という心を取り入れることで、精神的な豊かさを感じることができるのではないでしょうか。
春日さんは「水の流れる音が聞こえると春が来たなと思う」とおっしゃっていました。三月上旬。雪が解け始めた荻ノ島から春の音が聞こえてきます。

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荻ノ島かやぶきの宿はご宿泊いただけます!
かやぶきの屋根の下で囲炉裏を囲みながら荻ノ島の「じょんのび」を味わってみませんか

【詳しくはこちら】
高柳町観光協会 じょんのび高柳 「集落 荻ノ島」
http://www.jonnobi-takayanagi.jp/stay/oginoshima-stay.html

【施設利用料金(1棟あたり)】

■お食事は要相談【ご予約】
荻ノ島ふるさと村組合
[TEL]0257-41-3252(月・水~金 10:00~12:00)
※留守番電話の場合は、お名前、電話番号をお入れください。
折り返しご連絡させていただきます。*洗面用具は各自ご持参ください。
*シーツ、浴衣の洗濯料および冷暖房費は別途いただきます。
*キャンセル料は以下の通りです。
20~8日前までは宿泊料金の10%
7日~当日までは宿泊料金の50%

施設名 利用形態 利用時間 料金 定員
荻の家 宿泊 宿泊15時~翌10時 33,000円 9名
島の家 宿泊 宿泊15時~翌10時 22,000円 6名

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ライター:榎本未希

所属:大学生
自己紹介:
埼玉県出身。
旅と音楽と日本酒が好き。
新潟の大学で国際地域学を学んでいます。
新潟県に来てから、美味しいごはん、個性豊かなご当地グルメ、壮大な自然に出会い感動しています。
新潟で暮らす人びとの声とともに、新潟の魅力を発信していきたいです。

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