ムラに学ぶ、ヒトに学ぶ、自分らしいライフスタイルを実現する。
人生が楽しくなるインターン

1か月、新潟の山の集落で暮らす。

たぶん、この取り組みにおいて一番大きな意味をもつことがこのことだと思っている。
もちろん与えられたミッションを達成することも大事なのだけど、たぶんこのインターンを通して感じることも考えることもやってみることも全部きっかけは山の集落に住んでいることから始まるのだと思う。

私は今年大学4年生でこのインターンに参加したが、実は去年一年間大学を休学している。生まれ育った東京を離れ、新潟のある町に住みながらお米屋さんと本屋さんのプロジェクトに参加していた。同期と一緒には卒業できない道でありながら、私にとっては、本当に多くのことを学べた道だった。

私がインターンに参加した理由

そんな私がこのインターンに参加した理由は、3つある。

1つ目は、冒頭に書いたことであるが、「新潟の山で暮らしてみたかった」からである。休学して住んでいた新潟市の内野町は、商店街と住宅が連なる町。山の文化はあまりなかったように思う。研究室の調査や個人的にも山の集落に滞在したことはあるが、基幹的にも内容的にもあくまで「滞在」であって「暮らし」てはいなかった。1か月間どっぷりひとつの集落に暮らしてみることは、実際にやってみないとわからないことがたくさんあると思った。

2つ目は、このプログラムの内容が「山の百姓のナリワイを箱に詰めて販売する」というもので、私の興味のある内容だったからである。もともと、インターンプログラムが決定する前から主催者に概要を聞きおすすめされていたのだが、その時の印象としては、「誰に何を届けたいのか」をとことん考えて商品づくりを実施する、かつその商品の材料が山の百姓のナリワイ、ということで、何か自分が来年以降向き合う「働く」ということに関して勉強になることが多そうだなあ、というものだった。就職活動を終えたばかりの私としては、とても向き合ってみたいテーマだったのである。

3つ目は、項目にあげるまでもないことだがあえてあげると、「直感でおもしろそうだと思ったから」である。去年の休学を決めた時の決定打も、結局それだったように思う。理由は説明できないけれど私の中の何かが惹かれていて、気づかぬうちにわくわくしている。そういうものに体を預けて進んでみることの良さは、もう実感していた。

架空の「お店作り」がこのプログラムの内容

私たちのインターン「百姓百貨店」の課題は、100個のナリワイボックスを木沢集落で作ることだった。ナリワイボックスの作り方もイメージも特に決まりはない。山の百姓は、野菜作りやコメ作り、山仕事や藁仕事など、その名の通り百個のナリワイを持っていたというが、その「ナリワイ」から学んだり感じたりしたものを材料にした商品が並んでいる架空の「お店作り」がこのプログラムの内容である。なんとも抽象的でつかみどころのない課題ではあるが、その分自由に自分たちで作っていける課題だった。

1か月後、私たちはほぼ100個の「商品アイデア(簡単な企画書)」の作成と数個の商品の試作、2つの商品の実施という成果を得ていた。報告会には他の集落からの来客も含め20人ほどが集まり、その成果を見て楽しくあれこれを話すことができた。
もちろん、この成果は多少始める前に予想したものと違うものではあったが、とても満足のいくものだった。しかし、私が本当に大事だと思うものは、この成果物を作るまでの過程である。本当にその過程こそが木沢の人、私たち含めかかわった人たちに影響を与えたと思うので、あえて少し細かいところまでを書こうと思う。

「私、ここに暮らしてるんだなあ…!」

私たちの暮らした木沢集落は、新潟県長岡市に位置する旧川口町にある。人口は70人ほどで、約33世帯が暮らしている。12年前の中越地震では甚大な被害の出た場所だった。

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この集落の中に中越地震以後集落外に引っ越してしまった空き家があり、そこを改装してお客さんが泊まれるようにしてあるところに私たちは滞在していた。「里山ハウス」と呼ばれていて、昨年はイナカレッジの長期インターンの人が住んでいたり、毎週日曜日はそばやをやっていたりと、様々な活動の拠点になっている。なんと、きれいで芸術的な部屋が一人一部屋あり、私にとって初めての一人部屋がこのインターンで実現することになった。1階は広い和室1室で、えんがわのようになった長い土間が人を入りやすくさせている。

1週間目、私たちの仕事は、ひたすら木沢集落のことを知り、「住民」になることだった。地域の人と私たちをつなぐコーディネーターとして、山の暮らし再生機構の春日さんと佐藤さんが、集落の人を紹介してくれ、お茶のみの場を設けてくれた。挨拶をして、自分の紹介をして、その人の生い立ちや日ごろ何をしているか、木沢の話をする。その繰り返しをしていた。どこに行っても大学生が木沢に滞在することは喜ばれ、なんとなくまだ「お客様」という感じではあったけれど、山でずっと暮らしている人の話を聞くのはやっぱり面白くて新鮮でとても楽しかった。

1日目の夜に、もっと他の二人のことを知りたいと思って、それぞれの「人生振り返りミーティング」をした。自分の人生(小学生頃から)のモチベーションをプラスとマイナスで表し、共有する。これがすごく良くて、二人とも「自分がどんなことを感じているか」を大事にしていて、よくわかっているなと思った。話は盛り上がって一日目の晩から12時まで夜更かしをしてしまった。

4日目、何かが変わったと感じた。その日は初めて、私たちのお世話係である佐藤さんが「今日は自由に過ごして」と言い何も「お世話」をしなかった日だった。そうしたら、道端で声をかけられて話し込むわ、ふらっとドライブに連れて行ってもらうわ、突然おばあちゃんが遊びに来るわ、なんとも「偶然」いろいろな出来事があって、私はそこに強烈な「日常」を感じた。

「私、ここに暮らしてるんだなあ…!」

たぶん何年も暮らしている人からしたらまだまだなんだろうけど、そのことを実感したのだった。そして、ここに暮らす人の空気、安心感、かっこよさ。どうせならそういうものを箱に詰めて届けたいと思った。

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その夜のミーティングは大いに盛り上がり、今までにないアイデアがたくさん出た。私たちが箱に詰めたいものは、実体のあるモノとは限らない。じゃあどうやったら実体のないものを商品にできるだろう?

文通ができる切手が入っていたり、散歩の時間を楽しむ道具が入っていたり、山で悩みを打ち明けるチケットが入っていたり…
箱の中身は木沢に来たりかかわりを持ったり思い出したりする「きっかけ」を作るものとなっていった。

「お客さんとは、喜んでもらいたい人のこと。今一番喜んでもらいたい人って、誰だろう」

商品を作るための考え方を学ぶナリワイ講座や合宿を経て、いよいよ試作を作ったり、ブース出店の機会のある「ながおか市民活動フェスタ」に向けて準備をする2週目。それぞれの商品アイデアの「お客さん」をなるべくイメージできる具体的なものに絞って、そのお客さんに「届けたいもの」を届けられる手段を細かく考えて、価格も設定して、そしてできるものは動き出し始める。そのプロセスはとても面白いものだったし、商品の「実現」にはとても大事な過程だったのだけど、だんだん私はもやもやとしたものを感じ始めていた。

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「お客さんとは、喜んでもらいたい人のこと。今一番喜んでもらいたい人って、誰だろう」

それは、今の私にとってはまぎれもなく木沢の人なのだった。私たちが住んでいる家に寄ってくれたり、頼み事をしたら快く引き受けてくれたり、私たちの話を興味深く聞いてくれたりする、木沢の人たち。
単純にその人たちの役に立ちたい。楽しいな、これからもやってけそうだ、と思ってもらえる何かがしたい。そういう状態に「商品」という何か商業的な言葉がとても似あわないのだった。だから、もやもやしていた。

2週目の終わりに、再びスタッフみんなのミーティングがあった。今のもやもやを吐き出してみよう、というコーディネーターの西田さんの提案。3人ともそれぞれにもやもやを抱えていた。毎日ごはんを作ったり生活を共にしていると、意外とそのもやもやを共有するタイミングはなくて、みんなもやもやを言葉にしたのは初めてだった。ミーティングの結果、「誰かがこの商品を本気で作りたくなっている状態」をゴールにしていろいろな機会を作っていこうということになった。そのために報告会では商品ができた時どんなことが起こるか、を演劇にしてやったら面白いのではないか、という話にもなった。

この頃になると、祭りや「どなたでも会」という集まり、日々の散歩やお茶のみを経て、集落のほぼ全員とお話しし、何人かの方とはとても仲良くなっていた。2週目頃から思いついて配り始めた「百姓百貨店だより」も好評で、私たちのことを覚えてもらうのに一役買っていた。近年は祭りに出ていなかったばあちゃんが盆踊りを踊ってくれたり、毎朝家の前に来るばあちゃんは一緒に朝ご飯を食べるようになったりしていた。

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自分と目の前の人がうれしくなるものをひとつずつやっていきたいと思った。

唯一、出店という形でブースを構えることができた「ながおか市民活動フェスタ」では、考えた末、お客さんに自分がほしい、と思った商品アイデアに投票をしてもらったりアイデアを加えてもらったりと、「参加している」気分になるようなお店にした。他の出店団体も、利益追求というよりは社会貢献をしているような団体も多かったので、お客さんは応援してくれる姿勢の方が多く、とても和やかだった。私たち一押しの商品アイデア、1日木沢の男の手伝いをする「いい男修行」や集落の音を閉じ込めた「バージー」もそれぞれ響くお客さんに出会えて満足だった。ブースのレイアウトづくりも、スタッフみんなで知恵を出し合った結果とても満足いくものになっていた。

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市民活動フェスタから数日後、ますます木沢の人たちの魅力を感じる機会があった。前回の「百姓百貨店だより」にのせた「お茶会やります」の告知。夜は夕ご飯の準備があったり早くに寝るために飲み会などは来られないばあちゃんたちと、ゆっくり話すためにやりたいと話していたものだ。本当にこのお便りの告知だけでばあちゃんたちが来てくれるのか不安だったが、心配は無用だった。

13時ごろから、次々にばあちゃんたちが、集落の中では上のほうにある里山ハウスまで登ってきてくれた。最終的には9人のばあちゃんたちとわいわいテーブルを囲む形に。本当ににぎやかでかわいらしくて、にやにやが止まらなかった。私たちが勝手にお話ししたくて企画したものだけれど、ばあちゃんたちもお茶会は久しぶりだからうれしいと口々に言ってくれたのが最高に嬉しかった。こうやって、自分と目の前の人がうれしくなるものをひとつずつやっていきたいと思った。

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3人それぞれが一番やりたいと思っていることをやる。

いよいよインターン期間も残り1週間ほどになったとき、私たちは報告会をどのようにしたいか改めて話し合った。今たまっているアイデアや試作をどこまで進めて、どういう形で発表するのか。100個近くアイデアを出すとなると、残り期間で結構頑張らなくてはいけないのは、誰の目にも明らかだった。

誰を喜ばせたいんだっけ、ゴールは何だっけ、絶対やらなきゃいけないことってなんだ、、いろんなことが頭をめぐる中で、やっぱりこの3人だから、今だから、この場所だからこそできることをやりたいと思った。つまり3人それぞれが一番やりたいと思っていることをやる。それがいいんじゃないかと思った。

インターン生の一人であるあめちゃんは、このインターンが終わると台湾へ帰ってしまう。本当にファンの多いあめちゃんの絵をこの木沢でかける時間は限られているし、あめちゃん自身も「絵が描きたい」と言っていた。私は、「あめちゃんは絵を描こう」と言った。それを最後の日に集落の人に見せる「あめちゃん展」を私もやりたいと思っていた。直接商品に関係ないようなものでいて、実はこれも、ナリワイボックスのひとつなのではないか。そう思った。もう一人のインターン生である紫乃は、おばあちゃんと「文通ができる箱」の企画を進めることにした。

私はというと、A4の紙で作った商品の簡単な企画書を増やすことを主に進めていた。この頃になって今さら!と思うのだが、「ナリワイボックス」としてお店に並べてもいいものは実はもっとあるんじゃないか、と気づいたのだ。お客さんがそれを買って消費するような物だけじゃなくて、その商品をきっかけにひとつのナリワイが始まるような物でもいいのだ。もんぺ部や木沢便り編集部など、プロジェクトやチーム?と思われるようなものも、ナリワイなのかもしれない。

「何かがやりたくなってわくわくする部屋」を作れたのだとしたら

いつものように木沢の人たちと楽しく遊んだりお手伝いしたりおしゃべりしたりするのも忘れずに残りの日々を過ごし、最終日を迎えた。イベントなどを運営する直前はいつもそうだけれど、心がざわざわして落ち着かない。準備がぎりぎりの時はなおさらだ。前の日は3人とも2時くらいまで作業をしていた。

当日午前中に準備をした、2階の部屋を使ったふたつの展示が思った以上に見ていて楽しいものになったので、やっぱり場が作る力はすごいなあとちょっと感動しつつ、夜の報告会に挑んだ。

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報告会は大きく3部。展示と、演劇と、お別れ会だ。展示は、壁中にA4の紙で作った企画書を貼り、天井から箱形の企画書をつり下げた部屋「百のアイデア展」と、あめちゃんの絵をあちこちに置いた部屋「あめちゃん展」。百のアイデア展では、来て見てもらった人にシールで投票をしてもらう。もともと新しく壁が塗られたりしていた雰囲気のいい部屋だったからか、参加してくれた人はしばらくその部屋にいて「これやりたい!」「こんなのほしいなあ」と話しながら見ていたのが嬉しかった。「何かがやりたくなってわくわくする部屋」を作れたのだとしたら、それはひとつ、私たちがやりたかったことを達成しているような気もする。

演劇は、3つの商品「バージー」「お散歩箱」「文通が始まる箱」についてスタッフと飛び入り参加の参加者さんとで行った。これは、企画書だけだと伝わる部分の少ない私たちの商品アイデアについて、より具体的なイメージを持ってもらい、やってみたくなってもたうことが目的だった。あとで書いてもらった感想には、この演劇が面白かった、イメージがわいたと書かれているものがいくつかあり、なかなか成功だったのではと思う。
最後に、今までお世話になった皆さんと、たくさんの料理とともに宴。会の終わりにはぎりぎりで作った動画も流して、3人から一言ずつ(涙の)挨拶をして、お開きとなった。

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この人たちに喜びを届けるにはどうしたらいいかな、と考えるのが楽しかった。

かなり細かく1か月のインターンについて書いてきたが、最後に私がこのインターンで得たもの、気づきを書いてレポートを締めくくろうと思う。

ひとつは、意外かもしれないけれど、遊び心の大切さである。遊び心というのは、遊び半分でやるという意味ではなくて、遊びみたいなことを思い切って実験するという意味である。地域の取り組みや研究を見ていると、どうしても「課題を解決するための持続的で真面目で成果がしっかりしている」プロジェクトや団体を作ることが大事だと思われがちだけれども、そもそも地域での活動をそこに住んだり関わる人たちの幸福度をあげるためにやるとするなら、単純に「面白い」「楽しい」と思えるものを実験的にでもどんどんやっていくことが大切なんじゃないのかな、と思う。例えば、架空のお店を作る、という設定で商品づくりをしてみたり、やってみたいことを演劇で表現してみたり。インターンを通してそのことを確信して、これからも面白いことを思い切って実験できる自分でいたいな、と思った。

もうひとつは、田舎でのインターンは、大学生にとって自分のやりたいことや好きなことが確認できたりわかったりする場なのではないか、ということ。田舎でのインターンにもいろいろあるが、今回私が参加したような、だいぶ自由さがあり、また感性を信じられるサポートスタッフがいるインターンでは、特にこれがあてはまるのではないだろうか。理由はたぶん、「自分が何を感じているのか」に向き合う機会が多いことと、集落の人に愛をもって受け入れてもらえることだ。これは、企業のインターンでノウハウを身に着けようとするのとは全く違っていて、自分の感性を育てるものだと思っている。

「自分が何を感じているのか」を考えてわかった結果、私はこういうことが好きで、やりたいのかもしれない、というところに行き着く。現に私は、やっぱり山の暮らしや文化が好きだなあ、とか、移住者以外にこの地域のことを好きな人たちの関わり方を増やしたいんだなあ、とか、自分と目の前の1人の人が喜ぶことをしたいんだなあ、とか、いろいろなことに気付けた。今回の私にとっての目の前の人は、木沢の人たちと紫乃とあめちゃんで、この人たちに喜びを届けるにはどうしたらいいかな、と考えるのが楽しかった。もちろん紫乃とあめちゃん自身も集落での暮らしを通して自分自身の「好き」に向かっていたように思える。(こんなことを最後に書いていると、私は大学生に地域で感性を磨く体験をしてもらうお手伝いをとてもやりたいのだなあ、と気づく。)

最後に、プログラム自体には関係ないけれど、私がイナカレッジでバイトをしていた前期も含めて一番良い気づきだったなあと思えるのは、阿部さんを中心としたイナカレッジの人たちや、山の暮らし再生機構の春日さんや佐藤さん、その他長岡で働く若い人たち、もちろん木沢の人たちも、楽しそうに生きていること。それは、字面で見ても全く分からないと思うので、これを読んでいるまだインターンに参加していない大学生は参加すべし!本当に、目の当たりにする、というのは大きい。今後、私がどんな道を進むとしても、新潟で確かに楽しそうに生きている人たちがいて、その生き方がすごく遠くにあるものじゃなくて、顔や振る舞いが浮かんでいつか私もできるかもと思えるものなだけで、なんだか生きていける気がすると思った。
これから私がどんな仕事をして生きていくのかはわからないけれど、木沢のように会いたい人や景色が浮かぶ場所が、私の第二のふるさとになって、関わり続けていくのは確かな気がする。百姓百貨店の存続計画?もできる限り一緒にチャレンジしていきたい。

2016夏 インターン生
2016夏 インターン生
にいがたイナカレッジ
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